はじめに:「それ、本当にあなたの言葉ですか?」
「御社の社風に惹かれました」「人と関わる仕事がしたいです」「成長できる環境に身を置きたいです」――就活の現場でよく見かける言葉たちです。
どれも悪くはありません。むしろ“よくできてる”。だけど、私が人事として一番ひっかかるのは、**「この学生の想いが見えてこない」**ということ。
言葉が整いすぎていると、その奥にある“人間味”や“経験のリアル”がかすんでしまうんです。そして、誰の言葉でもあるように見えてしまった瞬間に、記憶からも印象からもスッと消えてしまう。
今回は、そんな「テンプレ志望動機」から卒業するためのヒントを、3つのステップでお伝えします。
ステップ①「なぜそう感じたのか?」を自分の過去に結びつける
たとえば「社風が自分に合っていると感じました」という言葉。これを“自分の言葉”に変えるためには、まず「なぜそう感じたのか」を自分の過去から掘り起こすことが大切です。
📌 例: 「高校野球のチームで、試合に出ていなかった先輩が、誰よりも声を出して支えてくれた。その姿に救われた経験がある。だから、個人主義より“支え合う風土”に惹かれた。」
これは、ただ「社風に惹かれました」と言うのではなく、“経験と感情が乗った”言葉になっています。聞いている人事も、その背景が想像できるから、深く共感できるんです。
ステップ②「どんな場面で自分が活きるか」を言語化する
人事は「あなたが会社に入ったら、どんな場面で力を発揮できそうか」を具体的にイメージしたいと思っています。だからこそ、「人と関わるのが好きです」だけでは弱い。
📌 変換例: 「野球部の後輩が監督との関係に悩んでいたとき、愚痴を受け止めながら少しずつ元気を取り戻していく様子をそばで見て、自分が“相手の本音を引き出す時間”に価値を感じた。その経験から、社会に出ても“言葉にできない思い”に寄り添える仕事がしたいと思った。」
このように、“経験+感情+行動”で語ると、あなたの強みや適性がぐっと立体的になります。
ステップ③「“らしさ”が出るまで削ぎ落とす」
最後の仕上げは、「ありふれた表現」をなるべく削って、自分らしい言葉に磨き上げることです。
たとえば、「御社のような成長できる環境で〜」といった“ぼやっとした褒め言葉”は、誰でも使えてしまうフレーズです。勇気を出して、こう言い切ってみましょう。
📌 例: 「私は、御社(貴社)の“挑戦して失敗できる”環境に魅力を感じています。野球部時代、ミスを恐れて消極的になったとき、監督に『失敗しない奴は何もしてない奴や』と言われた。その言葉に救われた経験があるからこそ、自分も“失敗に寛容な場所”で挑戦を続けたいと思いました。」
ここまで自分の想いが言語化できたら、それはもう**“世界に一つだけの志望動機”**です。
おわりに:就活は、「誰かの言葉を借りる」時間じゃない
正直、テンプレを使った方がラクです。でも、それは“あなた”を語ってくれるわけじゃない。誰かの言葉ではなく、自分自身の経験と向き合って、「なぜそう思うのか?」を深掘りすること。それができた瞬間、あなたの志望動機は“誰にも書けない一文”になります。
もし今「うまく書けない」と悩んでいるなら、焦らなくて大丈夫。私も昔は、何度も壁にぶつかりました。だからこそ、この記事が、あなたの最初の一歩になれたら嬉しいです。
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